狼な彼と赤ずきん
やはり、良くないことが起きようとしているのだろう。


森の住人たちは私にそのことを隠そうとしているようだが、簡単にわかってしまう。


それでも、彼らが隠したいと思っているのなら、私は気づいていないふりをした方がいいのだろう。


いや、しなければならない。



「今、スープを温めるから」



なるべく明るく、朗らかな声でそう言い、キッチンへ向かう。


しかし、狼は首を振った。



「……いらねえ。俺はもう寝る」



普段よく食べる彼が、食事を拒否するなんて。


私は信じられない思いで、湯浴みに行く彼を見送った。
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