狼な彼と赤ずきん
午後、彼らの話し合いが終わった頃、狐が訪ねてきた。



「狐さん!」



きっと良い知らせがあるに違いない。
私は大きく笑顔を浮かべた。


しかしその反面、彼の表情は暗い。



「赤ずきんちゃん。君はこれ以上この森にいてはいけない」



唐突に切り出された言葉。


私はきょとんとした。


彼の言葉の意味を、うまく脳で処理しきれなかったのだ。



この森にいてはいけないって、どういうこと――?



「今までは幸い何事もなかったが、このままこの森にいたら、遠くないうちに危険な目にあうことになるだろう。それが嫌なら、早く街へ戻ったほうがいい」



状況を上手く理解できていない私に、彼がわかりやすく説明してくれる。


つまり、この森に危機が迫っているということ、なのだろう。


私は目を伏せた。


あの話し合いでは、何も得られなかったということか。
< 82 / 129 >

この作品をシェア

pagetop