狼な彼と赤ずきん
そしてその夜、狼はいつもより激しく私を抱いた。


私が何度果てても繰り返し繰り返し私を貪り、意識を失うまで愛され続けた。


ぐったりと動けなくなってしまった私を、狼は痛いほどに抱きしめる。



「赤ずきん……赤ずきん」



彼はいつものように甘い言葉を囁いたりはしなかった。


ただ、私を腕の中に閉じ込めて、ひたすら私の名を呼ぶばかり。


まるで何かを恐れているかのように、珍しく震えている彼の声に、私は何も返すことができなかった。



何も、返す言葉が見つからなかった――。
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