狼な彼と赤ずきん
しかし、想像以上に彼は強かったようだ。


くわをもって、騎士たちを次々となぎ倒していく。



「うわああ!!」



「……うぐっ!」



ある者は足を、ある者は手を打たれ、その場でうずくまる。


しかしよく見ると、胸や頭など致命傷になる箇所は避けているようだった。


それが、優しい彼らしいところか。


私はごくりと唾を飲んで戦いの様子を見つめ続ける。




くわを持っている狼に対して、狐はなんと丸腰で騎士たちに向かっている。


すばしこい彼は、振りかざされる剣を華麗に避け、騎士たちの頭の上を飛び越えて木の上へジャンプし、そこから再び飛び降りて、何と剣の上に着地した。


突然かけられた彼の体重によろけ、騎士は剣を手放してしまう。


それを狐は素早く拾い上げ、騎士の喉元に突きつけた。



「すごい……」
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