狼な彼と赤ずきん
裁縫上手の兎は、指の間に針をはさんで騎士の目を狙う。


フクロウは木の上から石を投げていた。


小柄なリスは騎士の足元をちょこまかと移動して転ばせ、鹿は大きな角で彼らに突進していく。


ヤギと山猫は二人一組で騎士をはさみ撃ちにし、投げ飛ばした。



それぞれがそれぞれの個性を生かす戦い方に、私の目は釘付けになった。



今のところ、獣人たちの方が優勢のようだ。



しかし戦況は、午後から一転する。


騎士団が追加の援軍を送ってきたのだ。


今度は、四十人ほどいるだろうか。



地響きとともにこちらへ駆けてくる騎士たちの大群を見て、私は思わず悲鳴を上げた。



彼らはおそらく騎士団の中でも上位の者たちなのだろう。


発する覇気が、先程までの騎士たちとは全然違っていた。


腕には強さの証たる腕章がたくさんついている。



そして嫌な予感が的中したかのように、事態は暗転した。


取り囲まれる獣人たち。
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