狼な彼と赤ずきん
最初にリスが力尽き、倒れた。


次いでヤギと山猫が。


木の上にいたフクロウは安泰かと思われたが、あっけなく銃で撃ち落とされてしまった。


非力な兎は、騎士の一撃でよろよろと崩れ落ちた。


鹿は角を折られ、その場に膝をつく。



最後まで残ったのは狼と狐だった。


二人は背中合わせになりながら、じりじりと間合いを詰めてくる騎士たちに対峙している。


しばらくにらみ合いが続いた。


そして、間合いを詰めようと狐が一歩足を踏み出したとき。



「はっ!」


騎士の剣が彼の足首をかすめ、腱を切られて立てなくなった彼はその場にうずくまった。



「狐!」



慌てて狼が振り向いた、その時。



「これでとどめだ、汚らわしい獣め!」



――彼の胸を、大剣が貫いた。
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