狼な彼と赤ずきん
「狼さん、それにみんなも、私が手当してあげるから、ねえ、だから、頑張って、お願い……」



あちこちで力尽きている獣人たちに、懇願するように私は声をかける。


しかし、手当をしてあげると軽々しく言いはしたものの、実際はどうしたらいいのかわからないのが現実だ。


途方にくれてその場にしゃがみこんだその時、後ろから騎士に肩を叩かれた。



「君が、アレシアだね?」



アレシアとは、私の本名だ。


私は彼の方を振り向きもせずに頷いた。



「はい……」



私も、彼の剣でやられるのだろうか。


私、死んでしまうのかな。


ぼんやりと、そんな事を考える。


夢でも見ているかのように、現実味が全く感じられない。


ここ数日で起きたことの全てが、まるでどこか遠い国の物語のようだ。
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