狼な彼と赤ずきん
しかし騎士は、私を攻撃したりなどしなかった。



「アドラン様!間違いなくアレシアです!」



騎士が、馬に乗った金の甲冑姿の男に声をかける。



――アドラン?



「アレシア……!!」



アドランと呼ばれたその男はヘルムを外し、馬から降りるなり私を強く抱きしめた。



「ああ、アレシア、よかった……全て俺のせいだ、俺があんなことを言ったから、お前は自暴自棄になってこんな森に来て……狼に監禁されていたんだな、可哀想に……」



この声は、顔は、正真正銘、あのいじめっ子のアドランだ。


もともと性格のいい男だとは思っていなかったが、まさかこんなことをするほど鬼畜な人間だったとは。


世の中で一番嫌いな男に抱きしめられて、ひどく気分が悪い。
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