狼な彼と赤ずきん
彼が今まで私にしてきたことは、決して許されることではない。


祖母が亡くなった時だってそうだ。


軽々しく「逝けばいい」だなんて、冗談でも好きな相手に言うことではない。


自分で原因を作っておきながら、勝手にそれを解決した気分になって、満足している。


そんな男と、結婚などできるはずがない。



しかし、先ほど目の前で凄惨な戦場を見せられた私は、その衝撃のあまり抗議する気にもならず、ただ肩を落として馬の上で揺られていた。




アドランの率いる騎士団は、やがて見慣れた街についた。


いつの間にか、雨はやんで晴れ間が見えていた。


街の人々が街頭に出て、帽子を振っている。
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