背番号6、最後の青春
一度小さく深呼吸をしてから、菜乃ちゃんの椅子を指差した。
「その椅子は俺が持っていくから」
ね?と言ってもらおうとするけれど、菜乃ちゃんは遠慮気味に首を振った。
「先輩には任せられません!わたし、こう見えても力持ちなので大丈夫です!」
ニッと口角を上げて自慢げに笑う菜乃ちゃんに、そうじゃないともう一度呟く。
こう見えてって、確かに眼鏡かけてて小柄で、失礼だけど運動できなさそうだし体力なさそうには見えるよ!
でもそうじゃなくて、そんなのは関係なくて…。
でも、答えが菜乃ちゃんらしいなとクスッと笑った。
それから、優しく笑ってみせて、
「それ言ったら俺も、女の子に力仕事は任せられないよ」
そう言って「ほら」と椅子を渡すように急かす。
菜乃ちゃんは少し驚いた顔をしたあと、
「真矢先輩がそういうなら仕方ありませんね…」
悔しそうな顔をしながらも椅子を手渡してくれた。