背番号6、最後の青春
電車の座席はクロスシートというやつだったから、チラホラ空いている場所を見つけた。
隣に誰か座っているけれど仕方ない。
次の駅に着き電車が止まったすきに、弘也の手を引きその空いている場所に座らせた。
若干嫌そうな顔をする隣のサラリーマンに、「すいません」と軽く謝る。
「ちょ、俺別に立ってれるから座んなくてもいいんだけど!」
そう言って立ち上がろうとする弘也を抑えて無理やり座らせる。
「いいから、ジッと座ってろって。行きで足をさらに痛めるわけにいかないだろ」
そう言うと弘也はムッとして、おとなしく座っていてくれた。
俺はすぐ隣に立って、乗り換える駅まで弘也の様子を見ていた。
少しだけ顔が赤い気もするが、それは密度が高い電車のせいなのかもしれない。