背番号6、最後の青春



止めたくなった。でも止められなかった。

「弘也、しっかりしろよ!」

声が響いた。先輩の厳しい言葉と音が、引き伸ばされるように響く。

先輩はその時弘也を見たっきり、ボールの方を追ってしまった。

だから、大きな声で返事をしてそちらへ向かう弘也が足を引きずってることなど、知らないようだった。

やはり、見ていられない。交代ができるならしたいものだ。

前半はなんとか無失点におさえたが、逆に点を取ることもできなかった。

ハーフタイムとして戻ってきた弘也は肩で息をしていて、どこか目がトロンとしていた。

肩で息をしているのは、たくさん走ったからで納得できる。

だけど、ダルそうな顔とトロンとした目はそれでは説明がつかない。

走って疲れた顔ではないのだ。

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