背番号6、最後の青春



いきなり引き止められた弘也は、不思議そうに首を傾げた。

「俺、弘也が抜けなかった7番を抜いてくるから。そしたら、全部教えろよ」

きっと、弘也は教えてくれないから。こちらから聞き出さないと教えてくれないだろうと思ったから。

だから、無理やりそんな約束をこぎつけることにした。

弘也はムッとしながらも、仕方ないというようにコクリと頷いた。

「あいつ、なかなかやるからな?
…じゃあ、見てるから」

弘也はそれだけ言うと、俺が座っていたベンチの方に腰掛けた。


ハーフタイムみたいなのが終わり、A戦のメンバーがポジションにつく。

「レフリー!」

始まる前に、審判にそう声をかけて、弘也と交代することを告げてフィールドに入る。

6番を背負って立つ俺と、13番を背負ってベンチに座る弘也。

いつもとは全く逆だ。

逆の、ポジション。

< 108 / 283 >

この作品をシェア

pagetop