背番号６、最後の青春

弘也は言いにくそうに下唇を噛んでから、下を向いて目をそらした。

「…聞かない方がきっと、幸せだよ」

ボソッと呟いた弘也の言葉に、思わずムッとした。

それな菜乃ちゃんもらしく、強い瞳が弱々しい弘也を捉えていた。

「なら、それを知ってる弘也先輩は不幸なんですか？」

相変わらずハッキリと、ズバッと物事を尋ねる菜乃ちゃんに、心の中で苦笑いをする。

ハッキリしすぎて心にグサッと刺さるような聞き方だけど、言ってくれないんだから仕方ない、のかな。

俺もジッと弘也を見据えると、弘也は苦笑いをしながら、「そうかも」と呟いた。

知らない方が幸せ。確かにそうかもしれない。

真実なんて残酷なものばかりで、知らない方が幸せなことも多い。

けれど、弘也は今その真実とやらを知って不幸でいるんだよな。

自分1人で不幸を抱え込んでいるんだよな。