背番号6、最後の青春
「なあ、弘也」
いつものように弘也を呼ぶと、弘也は顔を上げて俺を見た。
「俺はさ、お前が不幸な分、俺も不幸になりてえよ。
何も知らないままの幸せなんて、絶対に後悔しか残らねえんだよ」
な?と問いかけながら訴えかけると、弘也は少し驚いたように目を見開いた。
春の喫茶店はクーラーも何も効いていないから、外と温度が変わらない。
むしろ外より生暖かくて、ちょっぴり気持ちが悪いくらいの風が吹く。
弘也はギュッと拳を握りしめたあと、ゆっくりとゆっくりと言葉を紡いだ。
「…骨肉腫って、知ってるか?」
諦めたように吐き出された言葉に、俺も菜乃ちゃんも首を傾げた。
…コツニクシュ?骨肉腫…だよな。
聞いたことはある気がする。だけど、何なのかは詳しくは知らなかった。