背番号6、最後の青春
少し遠くで騒がしい学生の声が聞こえてくる。
それなのに、やけに静まり返って聞こえるのは、弘也が気持ちが痛いからだろう。
「…早く、言ってくれよ」
弘也が話し終わったとき、俺はそう言って弘也を見つめていた。
「でも、なかなか言えなかったよな。話してくれてありがとう」
なるべく優しく弘也に笑いかけると、弘也は馬鹿みたいに泣き始めた。
なぜか笑いながら、「言えなくてごめんな」と泣き始めた。
そんな弘也にハンカチを押し付けた菜乃ちゃんは、そっと紙に何かを書き込んで、俺と弘也に渡した。
「わたしに出来ることがあれば言ってください。
弘也先輩。真矢先輩だけじゃありません。わたしもいます。部活のみんなもいます。
弘也先輩は愛されてるんです。支えようとしてくれる人がいるんです。
1人だけ不幸を抱え込んで泣かないでください。痛みを、分けてください」
強く強くそう言った菜乃ちゃんは、最後にふっと優しく笑うと、
「でも、それは簡単なことじゃないですよね。なんか、無理やり聞いてごめんなさい。
話してくれてありがとうございます」
そう言ってポンポンと弘也の頭をなでた。