背番号6、最後の青春
むせて息を整えていると、弘也がふと笑顔を浮かべた。
「なあ、病院を抜け出そうと思うんだけど」
小さな声でそう言ってきた弘也に、思わずは?と聞き返した。
今のは聞き間違いだろうか。いや、弘也なら言い出してもおかしくないことだけど。
女の子がいないことを確認した弘也は、コソコソと小さな声で話をする。
「海に行くだけだから。な?ほら、海に行きたいって話してただろ?
外出の許可がなかなか出なくてさ…。
それに、病院を抜け出すとかスリルがあるだろ?」
…あるけど。
やれやれだなあと頭をかく。
弘也はいつもいつもおちゃらけて、周りに迷惑をかけることだってよくあった。
そもそも、弘也はもうすでに車椅子による移動をしている。
車椅子で病院から抜け出すなんて、むちゃをするものだ。