背番号6、最後の青春



むせて息を整えていると、弘也がふと笑顔を浮かべた。

「なあ、病院を抜け出そうと思うんだけど」

小さな声でそう言ってきた弘也に、思わずは?と聞き返した。

今のは聞き間違いだろうか。いや、弘也なら言い出してもおかしくないことだけど。

女の子がいないことを確認した弘也は、コソコソと小さな声で話をする。

「海に行くだけだから。な?ほら、海に行きたいって話してただろ?

外出の許可がなかなか出なくてさ…。

それに、病院を抜け出すとかスリルがあるだろ?」

…あるけど。

やれやれだなあと頭をかく。

弘也はいつもいつもおちゃらけて、周りに迷惑をかけることだってよくあった。


そもそも、弘也はもうすでに車椅子による移動をしている。

車椅子で病院から抜け出すなんて、むちゃをするものだ。

< 141 / 283 >

この作品をシェア

pagetop