背番号6、最後の青春
浜辺からそう遠くない場所に停めてもらい、弘也をおろしてからお金を払う。
やはりというべきかかなりの金額である。
帰りは、できることなら電車で帰りたいものである。
「やっぱ海は広いなあ…」
俺が押す車椅子から手を伸ばしながら、弘也はしみじみとそう言った。
青い空を鏡のように映した海は、広く広くどこまでも続いていて、その向こうに陸など見えない。
永遠に続く海に、憧れを抱いたのは、どうしてだろうか。
どこまでも底知れず広がる海のように、こうして弘也といられる時間が永遠に続けばいいのにと、思ったからだろうか。
まだ6月のはじめだ。
海から流れてくる風は冷たくて、水に浸かるにはまだ寒すぎることを訴えかけてくる。
それでも弘也は、海を目指すように指示し続けた。
だから俺は、海に向かって車椅子を押していった。