背番号6、最後の青春



ブレーキを外した俺は、弘也を追って車椅子をゆっくりと押した。

少しだけ後ろを歩いていると、弘也が戻ってきて車椅子にドスンと腰掛ける。

「久々にたくさん歩いたから疲れたな」

むこうを向いてヘヘっと笑う弘也に、つい、振り返って弘也の足跡を見つめた。

たくさん、というもの前よりは格段に少なくて、確かにたくさんでも歩幅が小さい。

それは、弘也が徐々に歩けなくなっていってる証拠であり、弘也がどれほど歩くのに苦労していたかという証拠。

たった2週間で、ここまで歩けなくなってしまったくらいなんだ。

きっと入院する前も、足が痛くなり歩けなくなるスピードも早かったはず。

入院してからのように、肺に負担をかけないために走るなと言われない分、無理をしていたから。

もっとも、入院してから全然動かなくなり、病気が進行したという可能性もあるわけだが。

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