背番号6、最後の青春
弘也が持っている携帯に耳を近付けて、どんな会話をするのか盗み聞きしようとする。
しかし、弘也が何か言う前に、
「弘也ぁ、帰ったら説教ねぇ」
弘也のお母さんはそれだけ言うと、ガチャっと電話を切ってしまった。
ガックリと肩を落とす弘也の肩を優しくたたき、どんまいとだけ言ってやる。
「やべえ、母さん、めっちゃ怒ってる…」
しょんぼりとする弘也から携帯を受け取る。
病院からの着信はある時からパタリとやんでいて、きっと弘也のお母さんが病院の人に言ってくれたのだろう。
これは息子の友達の電話番号であると。
「まあまあ、俺も一緒に怒られてやるから」
車椅子の隣に行ってよしよしと頭をなでながらそう言うと、パッと明るくなった弘也がギュッと抱きついてきた。
「真矢様!ほんと大好き!愛しとる!」
弘也は相変わらずだ。
甘えてこようとする弘也を振り払い、ニッと笑ってから少し悲しそうな顔をする。
「ごめんよ弘也、俺には菜乃ちゃんがいるんだ…」
いないけど、そういう演技をしてみる。