背番号6、最後の青春
両手を広げて、ほらほらと走り出す弘也のあとを、車椅子を押しながら追いかける。
「わかったから、早く座れって」
そう言っても、嫌だと言ってなかなか車椅子に戻ってくれない。
それからしばらく歩いて、うまく動かない足でこちらを振り返ると、
「まだやりたいんだよ、サッカー」
悲しそうな顔をしながら微笑んだ。
…分かってるよ。弘也がどれだけサッカーが好きで、どれだけサッカーをやりたがっているか、知ってるよ。
弘也にとってあの狭い病室というのは、病室という名の牢獄だったのかもしれない。
自由がないのは当たり前だ。どんなに願っても外には出してもらえない。
サッカーが全てだと言っても過言じゃなかった弘也にとって、それはとても息苦しいことだったはずだ。
「だったら、治せよ」
気付けばそんなことを口にしていた。
「今回は協力したけど、今度からは協力しないからな。治るまで、協力してやんねえ」
強い口調でそう付け足すと、弘也は驚いたように目を見開いた。