背番号6、最後の青春
でもそれから嬉しそうに目を細めると、
「分かってるよ。もう抜け出したりしないって、今回だけだって」
そう言ってこちらに戻ってきて、車椅子には座らず、絶対に波が当たらない場所に行き、砂浜に腰を掛けた。
自分の隣をパンパンと叩く弘也に、俺は車椅子を近くまで持っていき、弘也の隣に腰掛けた。
「なあ、覚えてる?」
弘也の声に首を傾げる。
手にすくった砂はサラサラと指の隙間から流れ落ちていく。
「小5の時だったかな。俺がまだサッカーを始めて1年経ってないくらいの時にさ、海に来たこと。
真夏の海つったらやっぱ泳ぐのかなって思ったら、砂浜で裸足でサッカーやり始めたんだよな」
ケラケラと笑う弘也の笑顔に、懐かしい記憶が頭をよぎる。
…そういえば、そんなこともあった。
小1の頃からやっていた俺と、小4の後期から始めたばかりの弘也の実力の差は明確だった。
そんな中、ビーチボールを持ってきていたからって、水着に着替えて裸足でサッカーをやってたっけ。
…いつからだろう。弘也の努力に追いつけなくなったのは。