背番号6、最後の青春
また、弘也とサッカーがしたいんだ。
「…そろそろ、病院に戻るぞ」
寝転がったままの弘也を立たせ、車椅子に座らせる。
名残惜しそうに海を眺めた弘也だが、ニコッと笑うと思い切り海に手を振った。
「また、来るからな!」
きっと、来るからなと大きく大きく手を振った。
だから俺も、小さくではあるが海に手を振って一時のお別れを告げた。
…きっとまた、弘也とともに遊びに来るから、それまで待っててな。
海に背を向けて歩き始める。
その時、
「おーい、真矢先輩、弘也先輩!」
砂浜に面した道路から、手を振る誰かが俺らの名前を呼んだ。
聞き間違えるはずのない声に、よく見慣れたシルエット。
想定外の人物の登場に、思わず進む足を止めた。
「な、菜乃ちゃん?!」
菜乃ちゃんが、手を腰にあてて堂々と立っていたのだった。