背番号6、最後の青春
菜乃ちゃんの質問にコクコクと頷くと、ニコッと笑った菜乃ちゃんは途端に真剣な顔つきになった。
「真矢先輩に関する噂なんですけど、聞く前にちょっと確認してもいいですか?」
ジッと俺の横顔を見つめる菜乃ちゃんの視線を感じながら、素直に頷く。
「正直に弘也先輩のことどう思ってます?例えば、ずっとスタメンでいる弘也が羨ましいとか恨んでるとか」
菜乃ちゃんの唐突な質問に、思わず首を傾げた。
ずっとスタメンでいる弘也を、俺は羨ましいとは思えど恨んだりしたことはなかった。
「菜乃ちゃん、俺がそんなことで弘也を恨むと本気で思ってる?
聞くまでもないじゃん。弘也は大事な親友だよ。
確かにたまに羨ましくなったりはするけど、あの場所とあの背番号は、弘也の努力の結晶なんだ。
俺は、弘也の努力を知ってるから、恨んだりなんか決してしない」
思い切り笑顔を浮かべてそう言うと、菜乃ちゃんは心底安心した顔をして、そうですよねと微笑んだ。
「そうですよね。背番号が変わったときにショックを受けてたくらいですもんね。
普通なら喜ぶべきところで、悔しそうにしていたくらいですもんね」
クスクスと笑いながら、菜乃ちゃんは余計なことを思い出してそう言う。
…は、恥ずかしい…。