背番号6、最後の青春
…俺はあの時、欲しかったはずの6番のユニフォームを、初めていらないと思ったんだ。
随分昔のことに思えるが、そういえばまだあれから2ヶ月しか経っていないんだ。
「ああ、それで噂なんですけど。面白い…というのは興味深い方の面白いで」
必死に弁解をしてから、菜乃ちゃんは俺に一歩近付いた。
…今言うことじゃないかもしれないけど、すごい近いのといい匂いがする。
なんか変態みたいだけど、ここまで近いのに何も感じないほうがおかしいからな!
…くそ、これじゃあ話に集中できそうにないじゃないか。心臓の音がうるさすぎて。
心臓の音、菜乃ちゃんに聞こえなきゃいいけど…って、乙女かよ俺。
頭の中でそんな独り言を呟いていたけれど、菜乃ちゃんの言葉に一瞬で我に返った。
「…真矢先輩が、弘也先輩を階段から落としたっていう噂が流れてるんです」
思わず菜乃ちゃんの方を見ると、菜乃ちゃんは心配そうに俺を見つめていた。
いや、というか、近っ。ちょっと近すぎやしないか。