背番号6、最後の青春
菜乃ちゃんのやっていた仕事は、実は1人でできる仕事だったらしい。
花梨はあんなことを言っていたけど、本当は1人でもできるからと菜乃ちゃんが無理やり1人でやっていたのかもしれない。
もしそうなら菜乃ちゃんらしいなと、クスッと笑った。
「…真矢先輩、何笑ってるんですか…?というかわたし、仕事なくなっちゃったんですけど…」
ムスッとし頬を膨らます菜乃ちゃんに、悪い悪いと笑って返事をする。
「菜乃ちゃんは座っててくれてもいいよ。せっかくの練習試合だし、観戦してな」
ニカッと笑ってそう言ってやると、菜乃ちゃんは俺が水から手を抜いた隙に、タオルを持って冷やすための氷を占領してしまった。
「観戦は真矢先輩がしててください!わたし器用なので、観戦しながらでも仕事できますから!」
菜乃ちゃんはそう言うと、ふいっとそっぽを向いてしまった。
仕方ないと少しだけ離れて試合を観戦する。
ベンチに戻る気にはならなかった。菜乃ちゃんの側にいたいし、水道がほぼセンターラインの延長線上にあるため見やすい。
…といっても、やっぱり相手が強いためほとんど俺らの陣地でプレイされている。
ディフェンスが相手の陣地まで飛ばしても、また弾き返されてしまうようだ。