背番号6、最後の青春
「それじゃあ、真矢試合に出れなくないですか?」
それに対し愉多先生は、出ないけどと言いたげな顔をする。
「あ、今日は真矢先輩の代わりに俺が出ることになるって聞きました」
少し後ろの方にいた陽が手をあげて弘也にそう言う。
弘也はそうなんだと驚いたあと、少し苦い顔をして陽の方を見た。
「うーん…、俺は真矢に試合に出てほしいんだけどな…」
チラッと俺の方を見る弘也に、シンとその場が静まり返る。
そうして弘也があれと慌て始めた頃、車椅子の運転をサラッと幸人先輩が代わってくれる。
「じゃあ真矢がA戦に、陽がB戦に出ればいいだろ。弘也は俺が見とくから」
明らかに弘也を子供を扱うように頭をくしゃくしゃとしながら笑う幸人先輩。
本当は、幸人先輩が譲ったから陽がA戦に幸人先輩がB戦に出る予定だった。
陽は手を腰にあててふぅと一息つくと、
「俺にA戦はまだ早いですからね。まあ、本音をいうと出たかったですけど」
へらっと笑いながら俺にビブスを手渡してきた。