背番号6、最後の青春
「なかなかチャンスがきませんね」
ふと呟いた菜乃ちゃんに、そうだなと軽く返事をする。
俺はボールと弘也の動きを交互に見ることに集中していた。
俺ならできないことを、平気な顔してやってしまう弘也だ。この状況ならきっと…。
その瞬間、俺の睨んでいたとおり、真ん中の方にこぼれたボールを弘也が捉えた。
…だけど、なんか、気になる…。
それから弘也は走り出した左サイドハーフの人に向かってパスを出した。右寄りだった試合を左の方に展開させたのだ。
うまくパスが通じたらしく、それからトップ下の陸空先輩へとパスを出したようだが。
「…あー、ボランチが戻ってきてましたか」
少し判断が遅かったらしく、戻ってきた相手のボランチにカットされてしまった。
「んー、今のは良いと思ったんだけどなあ」
そう言いながら、俺はさっきの弘也の動きを思い浮かべ考えた。