背番号6、最後の青春
目が合って、慌ててペコッと頭を下げる。
先生もこちらと花恋ちゃんに頭を下げてから、また弘也の方を向いた。
「やあ、弘也くん。調子はどうかな?」
弘也の顔色や表情をうかがいながら尋ねる先生に、弘也は思い切り笑みを浮かべる。
「いいですよ、外に出れないのが悔しいくらいです」
遠回しに外に出せと言っているのを悟ったのか、先生はそうかいと笑う。
俺も花恋ちゃんも、ムッとする弘也に思わず吹き出した。
「んー、じゃあ、少し提案があるんだけど」
先生はそう言って、ベッドサイドに置かれた車椅子を見やった。
その隣の机に置かれたウィッグが目に入る。
…弘也は今は帽子をかぶることが多かった。
抗がん剤の副作用として髪が抜けてしまうからだ。
触れてほしくないだろうから一切触れてこなかったが、だいぶ前から抜けていた。
本人は強がっていて全く悲しむ素振りがないが、ショックであることに変わりはないだろう。
ただそのため、外出の時はいつもウィッグを被っているのだ。
帽子でいいと思うのだが、弘也なりのこだわりらしい。