背番号6、最後の青春
俺より小柄なくせに、菜乃ちゃんはギュッと強く俺を抱きしめていた。
よく見ると膝立ちをしていて、そこまでしなくてもと思ったけれど、それを指摘する余裕すらなかった。
我慢せずに泣いた。悲しい分だけ、遠慮せず泣いた。
声を上げることはなく静かに泣いていた俺は、そのうちにパッと顔を上げた。
少しだけ菜乃ちゃんと離れると、菜乃ちゃんも静かに涙を流していた。
「…っ、菜乃ちゃんも、泣いてんのかよ、」
嗚咽を繰り返しながら、途切れ途切れの言葉を紡ぐ。
菜乃ちゃんは乱暴に涙を拭いながら、
「ま、真矢先輩のがうつったんですっ」
そう言ってそっぽを向いてみせる。
素直に言わないところが菜乃ちゃんらしくておかしくて、お互いに少し笑った。
そうしてまた泣いたのは、いうまでもない。
泣いてもいいんだ、悲しいなら。
そしたら弘也に会ったときはきっと、大きな声で笑えるはずだから。
…俺には、弘也を笑顔にすることくらいしかできない。
それが、弘也のシアワセであることを願うことくらいしか。