背番号6、最後の青春
俺の前を歩く花恋ちゃんに追いつき隣に並び、「あのさ」と話を切り出そうとした。
しかし花恋ちゃんは人差し指を立てて俺の口の前に出すと、
「分かってるから」
そう言って悲しそうに笑った。
…分かってる?分かってるって、弘也のことを?言ってないはずなのにどうして?
戸惑う俺に、花恋ちゃんはまた歩き始めていた。
「…弘也くんが長くないのはなんとなく分かる。だから、遅くなる前に告白したんだ。
まさか、付き合えるとは思わなかったな。
でもね、ほんの少しでもいい。弘也くんの彼女でいられるの。
それってね、私にとってすごく幸せなことなんだ」
分かる?と聞かれて、なんとなくと曖昧な答え方をすると、クスクスと笑わられてしまった。
少しでもいい。自分が傷付いてもいい。好きな人の側にいたい。
花恋ちゃんの立場に立ってみると、その気持ちも分からなくはない。
好きな人の側にいられること、彼女でいられることは、確かに幸せなことだから。