背番号6、最後の青春



弘也はいつもの練習を懸命にする先輩の姿を、先輩が引退するまでに見たいと言っていた。

この時点でもう、先輩の引退までに退院できないと分かっているようだ。

それなのにサプライズだからと練習より別のことに熱を入れるのは弘也が怒りそうだ。

弘也の見たいものを見せてやる、つまりはいつも通り練習するのが最高のプレゼント。

サプライズは、確かに陸空先輩の提案したとおりお菓子などを振る舞うくらいでいいだろう。

さすが、陸空先輩だ。さすがキャプテンだ。

「じゃあ、その日にお菓子を持ってきて、練習後にでも食べましょうか」

思い出したのだがちょうど、明日の水曜日から午前授業のみになる。

夏休み前だからだそうだ。

だから、昼ご飯食べてすぐから練習をし始めるため、少し早めに練習を切り上げることも可能ではあるだろう。

愉多先生に確認する視線を送ると、愉多先生はどうぞと言うように大きく頷いた。

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