背番号6、最後の青春



部員たちも話したいことがあるだろうと20分ほど話したあと、車椅子は練習のよく見える場所に止めた。

みんなは、乗ってるのは弘也だし、ボールが飛んできても対処してくれるだろうと思っていたようなので、俺が菜乃ちゃんに弘也の側にいてくれと頼んでおいた。

みんなは、詳しい病気の名前や症状を知らないから、大丈夫だと思っているのだろう。

弘也の左腕がほとんど動かないってことを知らないから。

病院にお見舞いに来ていたと言っても、弘也は上半身だけ起こして動くことはあまりない。

特に誰か来ているとなれば余計に話すことに夢中になるはずだ。

何かものを取るにしても、台は右側にあるので左腕のことには気付かない。

大丈夫かなと弘也の方を見ると、菜乃ちゃんがいなくなっていた。

携帯の画面を見つめる弘也。そしてすぐに、菜乃ちゃんが花恋ちゃんを連れてきた。

そういえば、来るって言ってたっけ。

入りにくいと相談してきた花恋ちゃんのために、菜乃ちゃんに迎えに行くことを頼んだのだろう。

< 232 / 283 >

この作品をシェア

pagetop