背番号6、最後の青春
部員たちも話したいことがあるだろうと20分ほど話したあと、車椅子は練習のよく見える場所に止めた。
みんなは、乗ってるのは弘也だし、ボールが飛んできても対処してくれるだろうと思っていたようなので、俺が菜乃ちゃんに弘也の側にいてくれと頼んでおいた。
みんなは、詳しい病気の名前や症状を知らないから、大丈夫だと思っているのだろう。
弘也の左腕がほとんど動かないってことを知らないから。
病院にお見舞いに来ていたと言っても、弘也は上半身だけ起こして動くことはあまりない。
特に誰か来ているとなれば余計に話すことに夢中になるはずだ。
何かものを取るにしても、台は右側にあるので左腕のことには気付かない。
大丈夫かなと弘也の方を見ると、菜乃ちゃんがいなくなっていた。
携帯の画面を見つめる弘也。そしてすぐに、菜乃ちゃんが花恋ちゃんを連れてきた。
そういえば、来るって言ってたっけ。
入りにくいと相談してきた花恋ちゃんのために、菜乃ちゃんに迎えに行くことを頼んだのだろう。