背番号6、最後の青春



挨拶をして、ベンチの方へと戻る。

悔しくてみんなが涙を流す中、どうしてか俺だけは流れなかった。

ただ、ひたすら、弘也になんだか申し訳なくなってしまって。

ぼーっとしたまま、ベンチにあった荷物をまとめてみんなの方へと行く。

マネージャーの仕事があるらしい菜乃ちゃんは、軽く俺の肩を叩いてからどこかへ行ってしまった。

「…真矢先輩」

どうぞ、と携帯を差し出してくれた陽に、そうだなと笑いかけて受け取る。

弘也が、見ててくれたんだもんな。謝らないと、1回戦負けしてしまったこと。

しかし画面の中にいる弘也は満面の笑みを浮かべていた。


「真矢、お疲れ様!」

ニコッと笑ってそう言った弘也の顔がなんだか滲んでいく。

「いやー、大活躍だったな、真矢。惜しいプレイが多かったけど、なかなか…、って真矢?」

涙が頬を伝っているのに気付いたのは、そうして弘也に名前を呼ばれたときだった。

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