背番号6、最後の青春



試合に出る前、花恋ちゃんが来ているのが見えた。

悲しそうだけど乗り越えた笑顔で俺に軽く手を振ってくれた。

試合の挨拶をしてそれぞれのポジションについて。


『真矢、頑張れ!』


弘也の声が、耳をかすめた。

ベンチの方を見てももちろん弘也がいるはずもないのに。

空耳だ。まったく、いつまで経ってもお前の声が聞こえてしまう。

敵わねえよ、お前には。

いつまで経ってもお前の笑顔が思い浮かぶんだよ。


でもいつかはその笑顔も声も薄れてしまう。

それでも俺は前に進み続けなければならない。

悔しくて悲しくて、正直まだモヤモヤとして泣きたくなるけれど。

だからせめて、お前の声が聞こえても振り向かないで、俺は戦う。

6番を背負って、戦い続けるから。


いつかはきっと大切な人さえ失うことだってあるかもしれない。

でも、前を向け。

眩しい光に未来が見えなくなっても、前を向かなきゃいけないんだから。


また、今年も夏の終わりが近付いてくる。

青春が、終わりを告げたあの日から進んだ時間が、今度は夏の終わりを告げに来る。

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