背番号6、最後の青春
俺と弘也はクラスが違う。そして今は弘也が俺の教室に押しかけてきたわけだが。
弘也の後ろをたくさんの人が通っていく。
騒がしいはずなのに、光の差し込む廊下から音が消えていくような感じがした。
「そうか。それで、診察の結果はどうだったんだよ」
「…筋肉疲労だとよ。少しくらい休むことも覚えろって言われた」
相変わらずのおちゃらけキャラ。ヘラっと笑う弘也の笑顔はいつもと変わらない。
それなのにどうしてだろう。親友だからか気付く違和感。
「今日は、なんで休むんだよ」
問いかける俺に、弘也は頭をかきながら、
「いやー、今日は眼科行かなきゃいけないんだよ。最近視力が落ちてきててさ」
だからごめん、と言った。
…嘘つけ。俺は知っているんだからな。
数日前、視力がいい自慢してきたこと、しっかり覚えてるんだからな。
土曜日だって変わらず遠くの看板の文字が見えるって、言ってたじゃないか。
弘也の視力はかなりいいから、少しくらい落ちたところで問題ないじゃないか。