背番号6、最後の青春
屋根はそんなに広くない。俺の前に立てば菜乃ちゃんが濡れてしまう。
慌てて菜乃ちゃんの腕を引こうとすると、その腕を思い切り振り払ってきた。
「ちょっと、じゃないでしょう?何に悩んでるんですか?力になりますから」
強い目で俺を見ながらそう言う菜乃ちゃんに、何も言えなくなってしまう。
…力に、なれないと思うよ。
そう言いたい気持ちをおさえて、「そうだな」と笑ってみる。
それから、一瞬菜乃ちゃんが話してくれるという期待を見せた隙に、屋根の中に引き戻した。
俺たち部員は練習用の服に着替えているから、雨に濡れても制服に着替えればいいけど、
菜乃ちゃんたちマネージャーは着替えないから、濡れたらそのままだ。
それこそ風邪を引いてしまうだろう。
「…気持ちは嬉しいけど、だからといって雨に濡れるのは風邪を引いちゃうからやめてよ」
頭の上に乗せられたままだったタオルを菜乃ちゃんの頭の上に返した。