背番号6、最後の青春



自信満々にそう言う弘也に思わず吹き出す。

見ると、弘也も腹を抱えて笑っていた。

さっきまで泣いてたくせに、調子のいいやつ。


でも、楽しかった。何気ないこういう時間が、1番楽で楽しかった。

そんな中、ふと少女が走ってくるのが見えた。


見間違えるはずがない。二つ結びの黒髪を揺らす小柄な少女は、確かに菜乃ちゃんだ。

1つ年下の中学3年生で、去年までは俺らの部活のマネージャーだった。

地味な感じだけど働き者。ちなみに俺の好きな人である。

今は受験生なのにも関わらず、学校見学だと言い訳して俺らの応援に来てくれる。

ちなみに今俺らが通っている高校が第一志望らしい。


「良かった、お2人とも帰っていなくて。

あの、なんか長い時間座って泣いてたみたいなので、喉乾いてるんじゃないかなと思いまして」

はいっと言って、菜乃ちゃんは缶ジュースを押し付けてきた。

「いや、俺何もしてないんだけどな…」

遠慮がちにそう呟く。

それに、弘也が泣いていたことにはあまり触れないで欲しかった気もする。

女子に見られるとか、こいつまた落ち込むだろうよ。

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