背番号6、最後の青春



菜乃ちゃんは下を向いたまま、ギュッと拳を握りしめていた。

「マネージャーさん、あんまり真矢を困らせないであげてよ」

そんな俺らの前に立ってそう声をかけてきたのは、傘を持った陸空先輩だった。

「分かってますけど…」

しゅんと弱くなってしまった菜乃ちゃんに、思わず笑みがこぼれた。

俺と菜乃ちゃんは中学の頃からの知り合いだし、俺がよく話しかけていたのもあり菜乃ちゃんも強気だ。

でも、陸空先輩とは今年からの付き合いだし、その上3年生の先輩となるとあまり強く出れないんだろう。


「ほら、もう雨上がりそうにないし練習は中止するから、マネージャーさんは帰りな」

陸空先輩にそう言われては反論できないのか、菜乃ちゃんは大人しく「はい」と返事をした。

「気をつけて帰れよ」

折りたたみ傘を開き雨の中歩き出した菜乃ちゃんに、陸空先輩は手を振った。

それに対し振り返った菜乃ちゃんは、ペコリと礼儀正しくお辞儀をしていった。

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