背番号6、最後の青春
陸空先輩は答えない俺にニコッと笑いかけると、背伸びをして俺の頭をなでた。
「ちょ、何してるんですか…?」
ほとんどの部員が帰ってしまったため人はあまりいないが、1つ上の先輩にこんなガキ扱いは少し嫌だ。
…まあ、陸空先輩だから許すけれど。
陸空先輩は満足したのか俺の頭から手を離してもう一度笑った。
「…甘えてもいいんだよって、行動で示すのは難しいな」
「…はあ…」
訳の分からないことを言いながら自分の手を見つめる陸空先輩に、ため息を吐くようにして首を傾げた。
グランドにはほとんど人がいなくなっていた。
雨はまだ降りそそいでいる。止みそうな気配はしない。
陸空先輩は相変わらずの笑みを浮かべて、俺の顔をのぞき込んできた。
「とりあえずさ、1人で悩んでないで、相談くらいはしろよ。
…まあどうせ、弘也のことなんだろうけど」
ニカッと笑う陸空先輩の笑顔が、なんだか眩しくて思わず目をそらした。