背番号6、最後の青春
…確かに、弘也のことではあるけれど。
グランドの土に打ち付ける雨を見ながら、何も言わずに隣に立ったままの陸空先輩。
2人とも黙ったまましばらく経って、陸空先輩は不意にふふっと笑った。
「言いたくないなら言わなくていいよ。悪かったな、問いつめちゃって」
そう言ってほんの少し下唇を噛みながら思い切り笑ってみせた。
「ま、待ってください」
クルリと背を向けた陸空先輩に、思わず声をかけた。
振り返った陸空先輩は驚いた顔をしていたが、潤んだ目で俺を見ながら微笑んだ。
…陸空先輩は頑張り屋だ。いつもいつも俺たちのことを考えてくれている。
そんな陸空先輩を不安にさせたくなかった、悩んでる後輩の力になれない弱い奴だと思ってほしくなかった。
…目が潤んでいるのは、やはり自分は無力だと責めていたからかもしれない。
「…弘也が、足を痛めてたんです。本当は昨日病院行って筋肉疲労だと言われたと。
でも、俺はそうじゃない気がするんです。
だからなんか、嘘をつかれたみたいでモヤモヤしてただけです。
人に相談するほどのことじゃなかったからなかなか言い出しにくくて…」