背番号6、最後の青春
そう思ったけど、菜乃ちゃんなら別にいいのかそんなにショックは受けていないようだ。
というか、それよりジュースの方に目がいっている。
「真矢先輩は、応援頑張ってたじゃないですか」
ニコッと笑って、サラッとそんなことを言う菜乃ちゃんに思わずドキッとする。
それならと、ジュースはありがたく受け取ることにした。
「まあ、とりあえず菜乃ちゃんも一緒に帰ろうか。
駅まで送ってくからさ」
俺と弘也は高校の近くに住んでいるため、徒歩で通学している。
菜乃ちゃんも確かに去年まではこの近くに住んでいたのだが、今年になり少し遠くに引っ越してしまった。
まだギリギリ明るいとはいえ、女の子を1人で歩かせるのは気が引ける。
それに、送っていきたい。
「え、いいんですか?すいません、ありがとうございます…」
遠慮がちにそう言い肩をすくめた菜乃ちゃんに、構わないよと笑いかけた。
「よし、頑張れ、俺は帰るぞ」
逃げようと歩き出す弘也の首根っこを掴んで、
「お前もついてこい」
ジッと睨みつけてそう言う。
弘也は大きくため息をついてからフッと笑って、
「しゃーないな、ジュースのお礼ってことで」
そう言って諦めてついてきてくれることになった。
もうすぐ2月だ。暗くなるのは早い。
冷たい風に身を震わせながら、3人並んで歩く。
…次は絶対負けないからな。
いつか弘也の背負う6番を俺が背負って、俺の13番を弘也が背負って。
いつか弘也みたいにボランチとして活躍するんだ。
いつか、弘也と勝負して、勝つんだ。
勝負をして、勝ちたいんだ。
冬のあの大会のあと、俺は冬の夕空にそう願った。