背番号6、最後の青春
1.
練習に集中できるはずがなかった。落ち着かなかった。
一応レギュラー入りはしていたから、練習をするメンバーはいつもと変わらない。
だけど、やっぱり気まずいものだ。
陸空先輩や俊太、裕翔など、何も気にせずに振る舞ってくれる人もいる。
けれど、やはり時折「なんでお前だけ」とでも言いたげな視線を向けられたりもする。
突然変えられた背番号。欲しかったはずの6番のユニフォーム。…のはずなんだけど。
「…真矢先輩、水かけちゃいますよ」
昨日のことをまだ引きずっているのか、ムスッとした菜乃ちゃんが水撒きのためにかじょうろを片手に持ちながら話しかけてきた。
ちょうど休憩の時間だ。給水してから呆然とグランドを見つめていた俺を心配してくれたのだろう。
昨日今日と練習に集中できないのはあまりに迷惑をかけすぎているなと、思い出す。
「かけちゃっていいよ。頭冷やしたいし」
ニコッと笑いながら腰を折り頭を差し出すと、菜乃ちゃんは少し背伸びをしながら頭に水をかけてくれた。