背番号6、最後の青春



弘也は優しく、それでも強く左のももをさする。

ギュッと握りしめた拳を埋め込むように、強くさするから、それを止めようと手を出した。

だけど、その手は弘也に振り払われて、苦笑いした弘也が俺と目を合わせた。

「愉多先生が勝手に背番号変えたわけじゃないって、真矢にはバレちゃうから嫌だな。

…練習試合ではできるだけ頑張るけどよ、本戦で足引きずってたら迷惑だろ?

他の人にはまだバレてないけど、真矢にはあっさりバレちゃったし。

だから、真矢に俺の代わりを頼もうと思って。俺の、代理として走ってほしくて」

お願いだと手を合わせて笑いかける弘也の足を見る。

「そんなに、痛いのか?」

聞くまでもないのは分かっていた。弘也が正直に答えないことくらい分かっていた。

だけれど、聞いた。

< 63 / 283 >

この作品をシェア

pagetop