背番号6、最後の青春
困った顔をして、それからえへへと笑った弘也に、俺は答えを待つことなく頷いた。
「分かった。治るまでは、俺が代理でいるから。
その代わり、完全復活したら一度弘也に返すから。また、ちゃんとしたカタチで奪い取るから」
腕の中にあるユニフォームの袋をギュッと握りしめる。
…本当は、やっぱりいらないと思った。それでも突き返したいとさえ思う。
だけど、俺の言葉に安心したように笑う弘也を見ると、どうしても断われなかった。
俺がお前のために悩んだように、きっとこいつもこうなることをわかりながら背番号を変えることについて、俺のために悩んでいたのだろう。
弘也なりに、散々悩んだ結果なのだろう。
「…ありがとう。じゃあ、とりあえず帰ろうか」
クルリと振り返った弘也が、歩き出そうと左足を前に出そうとした。
思ったように動かなかったのか、引きずった足先が地面に転がっている小石を捉える。