背番号6、最後の青春



俺が咄嗟に手を出して弘也の左腕を掴んだために、なんとか転ばずに済んだ。

弘也の左足が、痛みのせいか小さく震えている。

足が、小さな小石すら避けれないほどに痛むのだろうか。

避けるために足を上げることができないくらい、痛いのだろうか。

…俺が異変に気付いた土曜日からたった4日後に、ここまで進行しているものだろうか。


「なあ」

俺は、下唇を軽く噛んで笑みを引きつらせる弘也に、そう声をかけた。

すぐパッと笑顔を浮かべながら、首を傾げてみせる弘也。どこまで、嘘をつく気なのだろう。

言いたくない気持ちも分からなくはない。だけど、言ってほしい気持ちを分かってほしい。

「…本当は、土曜の練習試合より前からずっと、足、痛かったんじゃねえの?」

俺の言葉に、弘也はフルフルと首を振る。

そんなことないと、痛くなかったと言いたげに振っている。

転びそうになった痛みからか、目が潤んでいるような気もした。

< 65 / 283 >

この作品をシェア

pagetop