背番号6、最後の青春
俺が咄嗟に手を出して弘也の左腕を掴んだために、なんとか転ばずに済んだ。
弘也の左足が、痛みのせいか小さく震えている。
足が、小さな小石すら避けれないほどに痛むのだろうか。
避けるために足を上げることができないくらい、痛いのだろうか。
…俺が異変に気付いた土曜日からたった4日後に、ここまで進行しているものだろうか。
「なあ」
俺は、下唇を軽く噛んで笑みを引きつらせる弘也に、そう声をかけた。
すぐパッと笑顔を浮かべながら、首を傾げてみせる弘也。どこまで、嘘をつく気なのだろう。
言いたくない気持ちも分からなくはない。だけど、言ってほしい気持ちを分かってほしい。
「…本当は、土曜の練習試合より前からずっと、足、痛かったんじゃねえの?」
俺の言葉に、弘也はフルフルと首を振る。
そんなことないと、痛くなかったと言いたげに振っている。
転びそうになった痛みからか、目が潤んでいるような気もした。