背番号6、最後の青春
まったく、やるときにできるのは本当に羨ましい限りだ。
未だにグチグチと俺に文句を言ってくる弘也を軽くあしらう。
弘也は「酷っ」と言いながら、諦めずに話しかけてきていた。
そんな俺らのやり取りを見て、誰かがクスッと笑った。
「強豪校と練習試合なんて贅沢じゃないですか。ほら、先輩方も準備手伝ってください」
ニコッと笑みを浮かべながら声をかけてきたのは、なんと菜乃ちゃんだった。
「あ、ああ、悪かった…」
思わずドキッとして、返事がたどたどしくなってしまう。
それから菜乃ちゃんに、すぐ側の部庫の扉に立てかけてある椅子を指差されて、そちらに向かおうとする。
そんな俺を見て弘也はニヤッと笑うと、椅子を手に取ろうとした俺の横から椅子を奪い取った。
横取りされキレそうになる俺の脚を軽く椅子でたたくと、
「ほら、菜乃ちゃん4つも椅子持ってんじゃねえか。
ここは男らしく、菜乃ちゃんの分を持ってやれよ」
ボソッと耳打ちをして、さっさとベンチの方に運んでいった。