背番号6、最後の青春
弘也の様子は目に見えておかしかった。
やがて、いつもいつも遅い奴らは俺らより先に扉の方に行くと、
「お前ら鍵よろしくな!」
と部室の鍵を投げて走り去っていった。
それを見送った弘也は、大きくため息のような深呼吸をして、荷物の方を見た。
「あいつら、もう行ったな」
そう言ってから、エナメルバッグを右肩の方にかけた。
いつもは、左肩の方なのに。
いや、そんな小さな違いがあるからどうというわけではないのだけれど、珍しいというか。
だから、ほんの冗談のつもりで、冗談といってもからかっている感じのものではないけれど。
「なにお前、左肩も痛めたりしたの?体操服まで右手に持っちゃって」
エナメルバッグだけでなく体操服まで右の腕で持とうとするから、そんなことを尋ねたのだ。
チラッと弘也の顔を見たその瞬間、俺と目があった弘也の顔が、悲しそうに歪んだ。