背番号6、最後の青春



弘也の様子は目に見えておかしかった。

やがて、いつもいつも遅い奴らは俺らより先に扉の方に行くと、

「お前ら鍵よろしくな!」

と部室の鍵を投げて走り去っていった。

それを見送った弘也は、大きくため息のような深呼吸をして、荷物の方を見た。

「あいつら、もう行ったな」

そう言ってから、エナメルバッグを右肩の方にかけた。

いつもは、左肩の方なのに。

いや、そんな小さな違いがあるからどうというわけではないのだけれど、珍しいというか。

だから、ほんの冗談のつもりで、冗談といってもからかっている感じのものではないけれど。

「なにお前、左肩も痛めたりしたの?体操服まで右手に持っちゃって」

エナメルバッグだけでなく体操服まで右の腕で持とうとするから、そんなことを尋ねたのだ。

チラッと弘也の顔を見たその瞬間、俺と目があった弘也の顔が、悲しそうに歪んだ。

< 93 / 283 >

この作品をシェア

pagetop