六芒星の記憶
「ばあさん、あの子のことどう思うんじゃ?」
ヨルは台所で2人で飲む暖かいお茶を準備しているイヨにたずねた。
「ジュリアちゃんかい?良い子だと思うよ。どうしたんだい?急に。」
イヨは入れてきたお茶をヨルの前に出し、椅子に座った。
「いや、昼間にあの子を見たときになんかの、すぐに壊れてしまいそうだったんじゃよ。それで声かけたんじゃけど、記憶をなくしているとはびっくりしてな。」
あの時、ヨルはジュリアを見てなにかを感じていた。
この子をこのまま放っておいてはいけないような気がしていた。
「そうだね、記憶がないことにはびっくりしたさ、でも記憶のヒントはあるよ。本人には無意識でも、そういうのは記憶のヒントになっていくはずだろ。うちらが支えてあげようさ、じいさん。」
イヨが言っているのは、ジュリアと会った時から感じていた、どこか上品な身のこなしや体に踊りの感覚が染みついているかのようなあの踊りのこと。
きっと良いとこのお嬢さんとかなのだろうね。とイヨは考えていた。
「そうじゃな、気長に構えて、一緒に過ごしていこう。」
この後すぐ2人は寝室で明日からの楽しい日々にうきうきしながら眠りについた。