朝顔 -生まれ変わっても君を-


―――――――――………
―――――……


「うわー、霧濃いな……。ってか、寒いし」


長袖を羽織ってきて正解だったな……。

私は、腕を擦りながら、ゆっくりと歩く。

コテージの周りだけを歩くつもりだったが、霧が濃すぎて、今自分が、どこを歩いているかも……。


「これ……、私……、ヤバイかも……」


旅行に来て、山で遭難とか……。

……笑えないんだけど。


そろそろ、引き返したほうが賢いかも。

いや、そもそも、どこへと向かって帰ればいいかも、いまいち分からないんだけど……。


そんなことを思いながら、とりあえず足を進めていると、霧の中に、微かに人影が見えたような気がした。


「きっ、気のせいだよね。人影なんて……、い、今の時間に、外に出てる人なんていないし……っ」


自分自身、外に出ているにも関わらず、意味のわからない事をボソボソと呟きながら、私は少し立ち止まる。

目を凝らしてよく見ると、気のせいだとは思いたいが、人影はそこにある。


うわ〜、どうしようかな……。

何もないような顔をして素通りか、それとも、来た道を戻るか……。


その答えはズバリ、来た道を戻る。
< 9 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop